目次
1.「PPは...ごめんなさい」そんな経験ありませんか?
優れた耐性と低コストが魅力なPP(ポリプロピレン)・ PE(ポリエチレン)。身の回りの製品にも沢山使われていますよね。
プラスチック商品の裏側をみると、この2つの材質を目にすることが多いと思います。
PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)製品に印刷したい!
…でも「この材質は密着が難しいので」と断られたことはありませんか?同じプラスチックなのに、なぜ密着が簡単なもの、簡単ではないものがあるのか..
今回はこちらのテーマについてお話させていただきます!
2. 適正なインクを選べば解決?
印刷されたインクが一定期間、対象物に密着するためには、インクと材質の相性が重要となります。インクメーカーによってプラスチック用、金属用、ガラス用などあらかじめ用意されており、更に、ABS用、PS用、ビニール用などプラスチック向けインクは更に細かく分かれています。適正なインクを選定することで大概の材質には適用することができます。しかし、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)は、適正なインクを選定したとしても、密着を確保することは容易ではありません。それはなぜなのか?まずは、良い密着を得るためにはどのような状態にする必要があるか、という視点でご説明していきます。
3. インクはどのように密着しているか
まず、良好な密着を得るためには、印刷表面の「濡れ性」が重要です。濡れ性とは、「製品表面を濡らす性質」であり、濡れ性はインクと製品材質の表面張力(引き付ける力)の関係により左右されます。言い換えると、親水性(=濡れ性が高い状態)がある状態にするという事です。(撥水加工生地に水がつくと水滴が丸の状態に近いと思います。あの状態は、濡れ性が低く、密着が得づらい状態という事になります)
そのため、印刷表面の濡れ指数が適正であれば密着性が期待でき、適正でなければ、印刷は可能かもしれないが、「密着/接着」は弱くなるということです。PPやPEなどのオレフィン系の合成プラスチックは、表面エネルギーが低く、「濡れ指数が低い」ために印刷の密着が困難なのです。
4. それでは、どのように密着を改善するのか?
では、印刷面の濡れ指数を適正値にすることはどうしたらよいのか?
それが今回のテーマである「前処理」と呼ばれる工程となります。
前処理工程の狙いは、「濡れ指数を適正にする=親水化する」ということにあり、材質や形状などに応じて前処理方法を選択します。
今回はその中でも一般的に良く使用されているフレーム処理とコロナ放電処理についてご説明します。
① フレーム処理
フレーム処理は、字のごとく、印刷表面を炎(フレーム)であぶる表面改質処理方法です。フレーム処理は、炎(熱の力)を用いて、空気中の酸素をプラズマ化させることにより、印刷表面に官能基を付与し、濡れ指数を高くすることにより密着性を助長します。印刷表面に熱がかかるため、熱に弱い材質や電子部品を実装している完成品などに使用することはお勧めできません。
② コロナ放電処理
コロナ放電処理は、高周波高電圧装置により発生させた電子を印刷表面に衝突させることです。
衝突することで印刷表面に官能基を生成することで、濡れ性を向上させます。
主にシート状の樹脂などに使用され大きな面積に安価で処理する際に使われています。
表面改質処理には、その他、プラズマ処理・イトロ処理などがあります。
③ プライマー処理
プライマー処理は、表面自体を改質・変化させる方法ではなく、印刷箇所にあらかじめ下塗り剤(プライマー)を薄く塗り、印刷表面の接着性を改善させる方法です。プラスチック用・金属用・ガラス用など様々なものがあります。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか、今回はインクがプラスチックに密着する条件と前処理方法についてご説明しました。
PP(ポリプロピレン)やPE (ポリエチレン)など密着が難しい材質でも、「前処理」を適切に行えばインクを密着させることができます。
適切な前処理を行うためにも、印刷をご希望される材質のチェックはお忘れなく!