今回は、PVC素材のレインブーツへ印刷を行ってみました。
PVCはさまざまなものに使われており、代表的なものとしては夏によく使うクリアバッグなどが身近ですが、実はPVCレザーといって、合成皮革(合皮)としても使われています。
様々な商品に使用されているPVCについて、今回は深堀していきたいと思います。
PVCとはポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)の略称です。
構造式はこんな感じです。
プラスチックの一種で、樹脂の種類としては熱可塑性樹脂になります。
塩化なので、塩素であるCl(クロロ)基がついていますね。
PVCの主原料のひとつである塩素ガスは、塩化ナトリウム水溶液の電気分解によって、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の副生成物として得られます。
2NaCl + H2O ⇒ Cl2 + H2 + 2NaOH
反応式をみると、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が生成される際、いっしょにCl2(塩素ガス)が発生していますね。
苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)という単語に、馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますが、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)は、化学繊維、自動車、パルプ、石鹸、食品と多くの産業で使われているので大量に生産されるんです。なので副生成物の塩素ガスも大量につくられるので、PVC自体も安価な材料として流通しています。
PVCは耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性を持ち、また、難燃性かつ電気絶縁性もあるので、用途は多岐にわたります。衣類、バッグ、ソファの張地、インテリアにはもちろん、長期間にわたって使用しなければならない絶縁被膜や水道パイプなどにも使われています。
このように優れた物性を持つPVCですが、紫外線には弱いです。
2. 本革(天然皮革)と 合成皮革/人工皮革
印刷素材である革は、「本革」と「合成皮革/人工皮革」に分けられます。
● 天然皮革(本革)とは
動物の皮からつくられているものを本革(天然皮革)と言います。
いわゆるレザーというと「牛革」がスタンダードではないかと思いますが、牛革以外の豚革、羊革、ダチョウ革など、動物の皮からできているものはすべて「本革」と呼ばれます。
また、牛革の中にも、カーフスキン(生後6ヶ月以内の仔牛の皮)、ハラコ(生後間もない仔牛の皮)、ステアハイド(生後3~6ヶ月以内に去勢され2年以上経った雄牛の皮)などたくさんの種類があります。
本革のメリットはなんといっても、耐久性と経年変化です。
丈夫で破けにくく、10年程度使用することができます。また、使えば使うほど革の色合いやツヤに変化が出てきて味が出ます。
ただ、その分、こまめにお手入れしないといけません(ブラッシングでの汚れとり、クリームを塗る、陰干し、乾拭き…)。革自体も重量があり、水や湿気にとても弱いです。また、動物の皮なので、革のグレードによっては希少性が高く、お値段も張ります。
● 合成皮革/人工皮革とは
その名のとおり、合成(人工)素材でつくられた本革っぽくみせかけたものになります。
布の上に、コーティングされた合成樹脂を張り付けています。
合成皮革は不織布以外の生地(編物や織物)の上に、合成樹脂をコーティングしたもので、見た目を本革そっくりにしたものです。人工皮革は不織布の上に、合成樹脂をコーティングし、より本革に近い構造、質感を持つものです。
合成皮革/人工皮革は一般的に「フェイクレザー」と呼ばれていますが、近年では「ヴィーガンレザー」、「アニマルフリーレザー」と呼ばれたりもします。
メリットとしては、本革に比べると製造・加工が容易であり、材料も安いため大量に生産ができます。また、汚れに強く、基本的にお手入れは不要です。
デメリットとしては、合成素材であるため、いわゆる経年変化を楽しむことはできません。また、一般的な合成皮革/人工皮革の寿命は2~3年と言われています。
ここまでの説明を読むと、みなさん、安価なものは合成皮革/人工皮革で作られており、
ハイブランド品は本革で作られていると思いませんか?
実際は有名なハイブランドのバッグでも合皮を用いているものがあります。
あんなに高いのに合皮なの!?と思いますよね。
ただ、一説によると、ローランクの革や、熟練していない職人が加工した本革よりも、
ハイブランドの合成皮革/人工皮革の方が質としては高い、なんてこともあったりするようです(諸説あります)。
合皮の寿命は2~3年と先程申し上げましたが、ハイブランドの合皮バッグは、きちんとお手入れをすれば20年~40年くらいは使えるものもあるそうです。
合成皮革/人工皮革は、ベースが不織布かそうでないかの違いでしたが、
表面の樹脂層に関してもいくつか種類があり、石油由来と植物由来のものがあります。
■ 石油由来
・PVCレザー
今回の試作素材でもあるPVCレザーです。
表面の樹脂層にPVCを用いているものがPVCレザーです。
安価で着色加工が容易、水や汚れにも強く、機能性・耐久性が高いですが、表面がひび割れやすいです。また、通気性はあまりよくありません。紫外線に弱いので、保管場所などに気を付ける必要があります。
■ 植物由来
環境保護やSDGsの観点から、植物由来のレザーへの関心が年々高まっています。動物性レザー(本革)では、畜産による温室効果ガス(二酸化炭素/CO2)の排出、鞣し加工の際による大量の化学薬品や水の使用などが問題視されていますが、植物由来のレザーであれば、温室効果ガスをはじめ化学薬品や水の使用を削減することができ、また、植物の種類によってはフードロスの削減などができることから、多くのブランドがさまざまな植物由来のレザーを開発しています。
・パイナップルレザー
パイナップルレザーは、食品加工過程にて残った廃棄予定だったパイナップルの葉を原材料の一部に使用している植物性レザーのことです。ナチュラルなシボ模様があり、手触りとしては麻や綿に近く、また軽量です。
・サボテンレザー
サボテンからつくられた植物性レザーです。サボテンは、少量の水で生育が可能なため、水や肥料などが節約できます。また、耐久性に強く、質感は本革にかなり近いといわれています。
・マッシュルームレザー
きのこの菌糸体を培養してつくられた植物性レザーです。菌糸体の微細な繊維による、なめらかなでやわらかい質感が特徴です。
マッシュルームレザーに使われる菌糸体の培養に必要なのは、水と空気と、きのこを育てる培地の表面を覆うもの(マルチング材)のみで、およそ2週間程度で培養が可能と言われています。耐久性もあり、水や傷にも強く、また、生分解性があるので、環境への負荷も低いことが特徴です。
・アップルレザー
南アフリカや中国を主とした世界各国の廃棄予定のりんごを使用している植物性レザーです。りんごは実に限らず、芯や種・木・ジュースまで余すことなく使用でき、廃棄箇所が出ないのが特徴です。
3. PVC 製品(革・成形品)への印刷について
● 革製品への印刷
革製品への印刷でもっともポピュラーなのは、ホットスタンプです。
金銀の箔を使用したものや、デボス・エンボス表現が可能です。
その他、スクリーンやパッドなどのインクを使用した表現も可能です(硬式野球ボールなど)。
印刷方法について詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
● PVC成形品への印刷
今回のレインブーツやお風呂に入れるアヒルのおもちゃ(PVC製)、浮き輪、バッグなどにも印刷することが可能です。アヒルのおもちゃには、溶剤系のインクを使用して、スクリーンやパッド工法で印刷を行います(お風呂に入れるアヒルのおもちゃは「ラバー・ダック」と呼ばれていますが、ゴム製以外にもPVC製のものがあります)。浮き輪など空気を入れて膨らませるものは、シート状態で印刷する必要があります。
基本的にはPVC製品は印刷が可能な材質となりますので、ご希望の方はお気軽にお問合せください。