今回は、野球ボールへの印刷をご紹介します。
ボールの印刷面は曲面なので、フルカラー印刷できる範囲に制限があり、絵柄の大きさで印刷の精度も微妙に変わってきます。
今回は2種類の印刷サイズでサンプルを作成しました。
印刷部分をわかりやすく拡大していますので、印刷サイズによる印象の違いもあわせてご確認ください
1.野球ボールについて
野球ファンではない方も、野球には「硬式野球」と「軟式野球」の二種類があることはなんとなく知っているのではないでしょうか。
この「硬式」と「軟式」のもっとも大きな違いは、ボールにあります。
軟式野球では、やわらかくてよく跳ねるボールを使っています。
一方、硬式野球のボールは硬くてあまり跳ねないという特徴があります。
この項目では、野球ボールについてもう少しくわしく見ていきましょう。
軟式野球ボールは全部で5種類
軟式野球ボールは、種類ごとに大きさ、重さ、反発力に違いがあります。
公益財団法人 全日本軟式野球連盟の規程によって、使う年齢別に指定されています。
・D号(小学校低学年)
・J号(小学校高学年)
・M号(中学生)
・H号 準硬式(中学生以上)※準硬式は24年8月実施の第75回大会で終了
・Kボール(中学生以上)※アジア選手権大会使用球(U12、U15)
ボールのサイズは、一番小さいD号で直径64ミリ・105gから、準硬式で72.5ミリ・144.8gまでとなっています。
硬式野球ボールは世界共通で1種類
硬式ボールは、1種類しかありません。
直径72.9mm~74.8mm、重さは141.7g~148.8gと、軟式よりかなり大きいサイズです。
そして、なんと硬式野球ボールの規格は世界共通で同じサイズとなっています。
しかし、同じ規格内で作られているにもかかわらず、選手からは「WBCの野球ボールは滑りやすい」「日本のボールより重い」と言われることも。
この違いは、野球ボールに使っている素材によるものです。
同じ素材で作られていたとしても、日本とアメリカでは革のなめし方や縫い目の大きさに違いがあり、微妙な差が出るようです。
また、規格内でも重さ7グラム、直径1センチの許容範囲があるので、最小で作るか最大で作るかでもかなりの違いが出るのですね。
野球ボールの素材 (本革・天然ゴム・合皮・PVC)
野球ボールの素材は、主に次のようなものがあります。
・硬式野球ボール 本革
硬式野球ボールは、野球ボールの中心部から、コルク、ゴム、羊毛、牛革と層になっています。
コルクで固められた芯を薄いゴムで包んで、さらに羊毛で覆い、最後に牛側で包んで縫い合わせます。
・軟式野球ボール 天然ゴム
軟式野球の公式試合で使われるボールは、天然ゴムで作られています。
軟式ボールは内側も外側もすべて天然ゴムで、耐久性が高くよく跳ねることが特徴です。
・練習用ボール 合成皮革、PVCなど
少年野球の練習用のボールは、合成皮革やPVCで作られています。
合皮やPVCの良さは、やわらかくてケガをしにくいことと、雨にも強くどんな天気でも使えるところです。
今回印刷したのは本革の硬式野球ボールですが、本革は表面に油分がありますよね。
油分が表面ににじむと、インクの密着に影響が出る可能性があるため、印刷には注意が必要です。
インクが長持ちするよう、油分があってもしっかり密着する印刷方法を選ぶ必要があります。
2.野球ボールへの印刷方法
ここからは、野球ボールへの印刷についてご紹介します。
単色とフルカラーの印刷方法について、それぞれの印刷範囲や特徴を見ていきましょう。
単色、ワンポイントの印刷はパッド印刷
単色でワンポイントの絵柄を印刷する場合は、「パッド印刷」です。
パッド印刷は、やわらかいパッドでインクをスタンプして絵柄を写す印刷方法です。
パッド印刷は曲面に印刷できるので、野球ボール、ペン、ワイングラスなど、曲面の多い製品の印刷に使われています。
パッド印刷に使う道具はこちらです。
・スチール版(鉄板に絵柄を凹状に加工したもの)
・シリコンパッド(絵柄のインクを拾い、製品に転写する役割)
・インク
まず、スチール版にインクをかぶせます。
次に、スチール版の絵柄部分にだけインクが残るように、余分なインクを取り除きます。
これで、スチール版の絵柄部分にインクが残りましたね。
残ったインクを、シリコンパッドで拾い、野球ボールに転写します
パッド印刷についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご確認ください。
多色、フルカラー印刷ならインクジェット印刷
2色以上の多色やフルカラーでの印刷には、インクジェット印刷を使います。
インクジェット印刷は、パソコンからインクジェットプリンタへ印刷データを出力しておこなう印刷方法です。
版(印刷デザインを彫った板)を作らなくていいという特徴があり、短納期にも向いています。
紙だけでなく、野球ボールや水筒など、さまざまな形状・素材の製品に印刷できるのが特徴です。
今回の印刷方法は「UVインクジェット印刷」
インクジェット印刷は、フルカラー印刷がイメージ通りにできることが大きなメリットです。
今回使ったのは「UVインクジェットプリンタ」です。
UVインクジェット印刷は、専用のインクジェットプリンタを使って、製品に直接インクを噴射して印刷します。
まず、プリンターの印刷テーブルに製品を固定します。
インクヘッドが左右に動きながら進み、UVインクを噴射して絵柄を印刷していきます。
このとき、印刷しながら同時に紫外線をあてていきます。
UVインクは紫外線をあてるとすぐに固まる特殊なインクなので、印刷と同時にインクが固まり密着します。
3.野球ボールへの印刷範囲
単色のパッド印刷と、多色・フルカラーのインクジェット印刷では、印刷できる範囲に違いがあります。
ここでは、それぞれの印刷範囲についてご説明します。
パッド印刷の印刷範囲(直径40mm目安)
パッド印刷で野球ボールサイズに印刷する際の目安は、約40mmの範囲となります。
ただし、側面への回り込みに比例して絵柄が伸びたり・歪んだりする傾向があるため、注意が必要です。
インクジェット印刷の印刷範囲(直径30mm目安)
インクジェットプリンタは、製品の真上からインクを噴射して印刷をおこなうため、印刷できる範囲に制限があります。
野球ボールの場合、インクジェット印刷での印刷範囲は、直径30mm程度までです。
硬式野球ボールは直径7.5センチ程度なので、その中心の3センチくらいが絵柄が印刷できる範囲となります。
4. 今回の印刷サンプル紹介
それでは、今回の印刷サンプルを見ていきましょう。
フルカラー印刷(直径30mm、飛び散り多め)
UVインクジェット印刷で、硬式野球ボールにフルカラーのロゴを印刷しています。
勢いのある筆の筆跡が、繊細に表現されていますね。

ここで見ていただきたいポイントは、「飛び散り現象」です。
インクジェット印刷では、インクヘッドから水平にインクが噴射されます。
しかし、野球ボールは表面が水平(フラット)ではありませんよね。
野球ボールのようなカーブのある製品に印刷する場合、曲面のトップ部分と傾斜部分では、インクヘッドからの距離に差ができてしまいます。
そうすると、傾斜部分にインクが飛び散る「飛び散り現象」が発生します。
こちらの写真は、絵柄の直径30mmで印刷したものです。
青いロゴのまわりに、インクがうっすら飛び散っているのが確認できるでしょうか。

フルカラー印刷(直径28mm、飛び散り少なめ)
こちらは、直径28mmで印刷したものです。
直径30mmのものより印刷範囲が狭くなった分、飛び散りが少なくなっています。

こういったケースでは、絵柄の大きさと精度のどちらを優先するか、お客さまに試作品を見て決めていただいています。
私たちの制作の流れとしては、必ず試作品の制作をして、実際に印刷の具合をご確認いただいてから進行しています。
「こういう条件ではどんな印刷になるか」など、ご不明な点がございましたら、どんなことでもお気軽にお問い合わせください。
5.まとめ
今回は、野球ボールへの印刷をご紹介しました。
野球ファンにとって、推しのチームのロゴやキャラクターが印刷された野球ボールは、特別な記念品になりますね。
私たちは、今回のような野球ボールのほかにも、さまざまな製品への印刷を行っています。
最小ロットとして1点からのご注文も可能ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

