今回は、PP(ポリプロピレン) 製の買い物かごへ印刷を行いました。
最近は、セルフレジやレジを通らずにお買い物ができるスマホ決済サービスなどを取り扱うスーパーも増えており、昔に比べてお買い物の仕方も進化していますね。
まずはPP(ポリプロピレン)についてお話しさせていただきます。
ポリプロピレンとはプロピレンの重合体のことで、熱可塑性樹脂に分類されるプラスチックです。
重合体とは、単量体(モノマー)が集まったもののことで「ポリマー」とも呼びます。
プロピレン(モノマー)がたくさん集まったものなのでポリプロピレンといいます。
五大汎用樹脂のひとつに数えられており、わたしたちの日常生活で広く使われているプラスチックです。
ポリプロピレンの特性
耐薬品性
PP(ポリプロピレン)は、酸、アルカリ等に対して強い耐性を持っているため、
薬品を入れる必要がある注射器やパウチなどの医療機器にも使われています。
注射器のシリンジの目盛り線への印刷は、パッド印刷が一般的ですが、
シリンジの羽部分と目盛りの位置が遠ければ、回転シルク印刷でも可能です。
耐熱性
PP(ポリプロピレン)はプラスチックの中でも耐熱性が高く、成形品によっては融点が160℃以上となっています。
この特性から、電子レンジで使用可能な食品保存用タッパーなどに使われています。
PP(ポリプロピレン)は印刷用のインキが密着しにくいことから、プラスチック成形時に凹凸をつけることで、
ロゴや文字を表現し、ブランド名や注意事項などを表記しているケースが多いですが、前処理を行えば印刷も可能です。
このほかにもPP(ポリプロピレン)にはさまざまな特性があり、また、加工がしやすいことから、フィルムやクリアファイルをはじめ、自動車の部品や家電製品の筐体、またポリプロピレン繊維として、カーペットやアンダーウェア、紙おむつなどにも使われています。
ポリプロピレンの立体規則性
ここまでPP(ポリプロピレン)についてお話ししてきましたが、
ポリプロピレンはその構造によっていくつかの種類に分けられます。
まず、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーの3種類に分かれており、
ホモポリマーはその立体配列によりさらに3種類に分けられます。
ホモポリマー(ホモPP)
1種類の原料から構成されるポリマーをホモポリマーと呼びます。
ポリプロピレンは不斉炭素原子を持つポリマーなので、立体規則性があります。
そのためポリプロピレンのホモポリマーは、アイソタクチック(イソタクチック)、
シンジオタクチック、アタクチックの3種類に分けられます。
1. アイソクタクチックポリプロピレン(iPP)
すべてのメチル基が同じ側に、規則的に配列しているポリプロピレンのことです。
一般にポリプロピレンといえば、このiPPを指します。
2. シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)
交互配列からなるポリプロピレンです。
3. アタクチックポリプロピレン(aPP)
ランダム配列からなるポリプロピレンです。
不斉炭素原子とは?
炭素(C)は4本の手を持っているので、4つの置換基と手をつなぐことができるのですが、
この4つが全て異なる置換基を持つ炭素原子のことを不斉炭素原子といいます。
また、不斉炭素原子を持つ分子は「鏡像異性体」を持っています。
鏡像異性体は下図のようにお互いが鏡像で重なり合うことがありません。
破線とくさび形の線は何?
有機化合物は原子が三次元的に結合していていますが、二次元の紙面では表現することができません。
そのため、破線-くさび形表記などを用いることで三次元の構造を表現します
破線が奥の方、くさび形の線が手前にあると思ってください。
ランダムコポリマー(ランダムPP)
2種類のモノマーでつくられたものをコポリマー(二元共重合体)といいます。
ポリプロピレンのランダムコポリマーはエチレンとの共重合体になりますので、
プロピレンとエチレンがランダムに配置されているような構造になります。
ホモPPより結晶性が低く、透明性に優れているため、衣装ケースなどに使われています。
ブロックコポリマー(ブロックPP)
ポリプロピレンのブロックコポリマーというのは、ホモポリマーの重合に続き、
エチレンが共重合された、エチレン-プロピレン重合体を含む組成物を意味します。
ホモポリマーの「海」のなかにエチレン-プロピレン重合体の「島」が点在した構造をしていることから「海島構造」とも呼ばれます。
ブロックPPはホモPPに比べ、耐衝撃性が高いのですが、この海島構造のおかげだといわれており、その特性により自動車の部品(バンパーやバッテリーケースなど)や家電製品(洗濯機や冷蔵庫など)に使われています。
2. 買い物かごについて
買い物かごといえば、お店の入口にたくさん重ねて置いてある「プラスチック製のかご」が思い浮かびますが、昔は買い物かごといえば「竹」や「籐」といった天然素材でつくられたものが主流でした。スーパーマーケットができるまえは、野菜は八百屋さん、お肉は精肉店などと、それぞれのお店で買い物をする必要があったため、家から買い物かごを持っていく必要があったのです。
その後、スーパーマーケットが普及すると、無料でレジ袋がもらえるようになりましたので、
昔ながらの買い物かごを見ることも少なくなりました。
現在はレジ袋が有料になってしまったことや、SDGsの観点からプラスチック素材のエコバッグといった、
昔よりスリムで軽くなった「買い物かご」を持ち歩く形になりましたね。
買い物かごを大きくすると売上がアップする
お店に入ると何気なく置いてあるプラスチック製の買い物かごですが、
実は、これがあるかないかで売上が大きく変わってきます。
お店に入ったときにかごが置いてなかったら、手に持てる量しか買えませんよね?
両手がふさがってしまったら、気になるものがあっても手に取れません。
かごがあれば片手が空くので、他の商品もついでに買ってくれるかもしれません。
B to Cの店舗では、かごの色や大きさ、かごを置く場所によって、売上が変わってきますので、よく考えられて配置されています。
また、ショッピングカートがあれば、買い物かごを2個置けますし、手で持つよりも重さを感じにくくなるので、さらにたくさん買ってもらえます。
3. ポリプロピレン製の買い物かごへの印刷結果
それでは、今回の試作事例をご紹介いたします。
印刷はパッド印刷工法で行いました。
難密着素材であるPPへの印刷となるため、前処理をしてから印刷しました。
その他、市場で流通しているもの中には、ホットスタンプが用いられている例もあります。
ホットスタンプは熱と圧力で密着させるので、前処理が必要ない場合もあります。
確認方法としては、手で触って凹を感じたら、それはホットスタンプ工法で加飾されています。
逆にフラットで凹が無いものは、パッド印刷か、スクリーン印刷工法で加飾されています。。
是非、スーパー等で触って確かめてみてください!