
今回の試作事例は、ワイングラスです。
最近はパーティー用としてプラスチック製の使い捨てワイングラスなども販売されており便利ではありますが、
やはりガラス製のものは重厚感があってよいですよね。
ワイングラスと一口に言っても、飲み口の大きいものや、小さいサイズなど、
さまざまな形状がありますが、まずはどうやってつくっているのでしょうか?
私たちが想像しやすい成形方法のひとつとして「吹きガラス法」があります。
長い棒に職人さんが空気を吹き込んでくるくるまわしてグラスをつくっているのを映像で見たことがありませんか?あれが「吹きガラス法」です。
職人さんがひとつひとつ手作業でつくっているため、大量生産することはできません。
私たちが量販店で購入するようなワイングラスは、大きなガラス工場さんで全自動でつくられています。
ワイングラスの製造方法(量産品)
ガラスの主原料は、珪砂、ソーダ灰、石灰石などになります。
まずは目的の製品用に調合された原料を溶融炉(約1,500℃)で溶かします。
溶かしたあと、機械で切断したり、金型に入れたりして、形を整えたら、
徐冷といって時間をかけて均一に冷やします。
このとき、ゆるやかに冷やさないとひずみが残り割れやすくなったりします。
その後、目視では見分けにくい傷などを検査機にかけたり、
コーティングやラベル加工を行ったり、瓶に直接印刷を行ったり、焼き付けを行ったりします。
ざっくりではありますが、このようなフローで製造されています。
また、ワンストップで製造から印刷まで行う会社さんもあれば、
製造と汎用的な加工を行い、特殊な印刷は他社さんへ、というケースもあります。
溶融炉であったり、徐冷設備であったり、大掛かりな設備が必要なため、
新規参入がむずかしく、国内でガラス製品をつくることができる工場は限られています。
また、設備のアップデートや維持費用、後継者の問題もあって、
国内ですと廃業や統合するガラス工場さんも多いのが現状です。
また、ガラス製品への印刷を行っている会社さんでは、
最低ロット数を大口で設定している会社さんも多く、
個人の方がオリジナルガラスへ印刷したい!となってもお願いするルートが見つからないケースもあります。
弊社では、ガラス印刷を専門に行っている協力会社さまとのネットワークがありますので、
小ロットであっても印刷することが可能です。どうぞお気軽にお問い合わせください。
ワイングラスの材質
ワイングラスは、ソーダガラス、クリスタルガラス、
耐熱グラス(ホットワイン用)などの材質でつくられています。
弊社ではどの材質のものでも印刷請負実績があります。
お問い合わせ時にお知らせいただけるとスムーズにご案内ができます。
ワイングラスの形状
ワイングラスは
「リム」「ボウル」「ステム」「プレート」
と呼ばれる4つのパーツによって成り立っています。
リムは飲み口の部分、ボウルはワインが注がれる丸みのある部分、
ステムは持ち手部分、プレートは底部のことです。
ワイングラスはこの「ボウル」の形状で変化を出していることが多く、
さまざまな形のワイングラスが販売されています。
2. ワイングラスへの印刷方法とインキについて
ワイングラスは形が繊細なこともあって、
印刷はむずかしそう!と考えられる方も多いのですが、
手法としては、たくさんあるんですよ。
基本は、ボウル部分にワンポイント印刷となりますが、
印刷方法によっては、ステムやプレート部分にも印刷が可能です。
① パッド印刷
パッド印刷は有版印刷の一種です。
印刷する際に版や治具が必要になりますので、小ロットの場合は、コスト高になります。
パッド印刷はR形状への印刷が得意な手法なので、
転写ではシワが寄るような球体形状でも印刷することが可能です。
基本は有機インキ・単色印刷となります。
② スクリーン印刷
スクリーン印刷もパッド印刷と同様に版や治具が必要になります。
本来は平面での印刷になりますが、
回転治具を用いた「回転スクリーン印刷」という手法であれば、ワイングラスにも印刷が可能です。
印刷範囲はボウル部分のみ、基本、単色印刷となります。
あまりにも傾斜が激しすぎると、回転スクリーンでは印刷できない可能性があります。
③ 転写
パッド、スクリーン印刷と同様に版を作成する必要があります。
転写の強みは、精度のある多色表現です。
カラー印刷したフィルムを水で貼り付け、そのまま焼き付けを行う、といった手法になります。
一般的に無機インクを使用するため、ビビッド系等の鮮やかな発色は再現がむずかしい場合があります
(PANTONE指定は可能、輝度の高い金色も可能です)。
④ レーザー
光線を照射し、表面を加工することで、文字やデザインを施す加飾方法になります。
他の加飾方法に比べると、印刷にかかる時間が長く、コスト高になる傾向がありますが、
版を作成せずに1個から作成できます。また、意匠性の高い繊細なデザイン表現が可能です。
〔 インキについて 〕
ガラスに印刷する際は、専用のインキを用いる場合がほとんどですが、
インキの種類によって焼成の方法が異なります。
有機インキ
弊社内でも使用することがあるインキです。鮮やかな発色が可能です。
印刷したあと、乾燥機に入れて熱硬化させます。素材や使用するインキによって乾燥時間や温度を調整します。
無機インキ
無機インキというのは「鉱物」によってつくられていますので、
有機インキに比べると、色味がくすんでいるものが多いです。
また、有機インキよりさらに高温の600℃位で焼き付けを行います。
ガラスが溶けるほどの高温になりますので、
ワイングラスの形状によっては、ステム(脚)部分が曲がってしまうこともありますが、
曲がらずに焼き付けを行うノウハウを持っておりますので、ご相談ください。
3. ワイングラスへの試作事例
今回はパッド印刷にて試作を行いました
試作に用いた商品情報は以下のとおりとなります。
〔 ワイングラス 〕
材質:クリスタルガラス(鉛フリー)
容量:730ml
重さ:200g
サイズ:111mm×220mm 口径75mm
印刷範囲:横40mm×縦47mm
まずは完成品をご覧ください。

画像では少しわかりにくいかと思いますが、
ブルゴーニュグラスとよばれる、かなり大きめのワイングラスになります!
印刷面のアップ画像もご覧ください。
金色の文字に見えると思いますが、
金色のインキではなく、社内で調色を行って印刷しております。
こんなことも可能です!
口線加工(金巻き)をご存知でしょうか?
コップのふち(飲み口)に色をつける加工のことをいいます。
グラスのふちにこのように金色で印刷することによって高級感を出すことができます。
またこれは「金箔」を使って印刷していますので、口に入っても問題ないものになります
(よく豪華な食事の上に金箔が添えられていることがありますよね!)
弊社ではワイングラス以外でも、
ビールジョッキやシャンパングラスなど、
飲用グラスに関するさまざまな印刷実績やノウハウを持っております。
ぜひお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。